決め手は、田舎の一軒家
2020.03.09
こんにちは、萩ドットライフ(
)です。幼少期、うるさくしていると「田舎の一軒家じゃないんだから」と叱られていました。以来すっかり「田舎の一軒家」という言葉がアタマから抜け落ちていたのですが、このたび萩市への移住のための家探しの決め手になったのが、このワードだったのです。
「田舎の一軒家じゃないんだから」
こどもの頃。もう50年も前のことだけれども、古い長屋造りの借家で暮らしていました。
長屋造りというのは、お隣さんと戸境壁を共有している家のことですね。
僕は幼児期から小学校までの腕白盛りをその家で過ごしたのですが、事あるごとに「田舎の一軒家じゃないんだから」と叱られていました。
家の中を走り回ったり、タンスに登って飛び降りたり、天井裏に上がって遊んだり、奇声を発し続けたり、なかなかヒドい子供だったので、うるさく言われて当然といえば当然だったのです。
中学校に入学するころには、両親が家を建てて引っ越したのですが、そこでは当時小学生だった弟が「田舎の一軒家じゃないんだから」と叱られていました。
なんとなく不思議に思ったのですよ。
前に住んでいた借家のあった場所は、市内の中心部だったのですが、そこから2km程度移動した郊外、山のふもとの「田舎(だと思えた)」の「一軒家」に引っ越したのです。
それでもまだ「田舎の一軒家じゃないんだから」と言ってるのですね。
僕も子供だったので「両親や祖母の口ぐせみたいなものなんだろうな」と特にその言葉の定義を問い訊ねるわけでもなく、そのうち弟の成長とともに家族の中に「田舎の一軒家じゃないんだから」と叱られる人もいなくなり、その言葉を聞くことはなくなっていたのです。
そのうち僕は大学進学を機に家を出て、寮、合宿所暮らしを経た後、社会人になった後はアパート、マンション暮らしをしてきました。
その間、昔何度も叱られた「田舎の一軒家じゃないんだから」という言葉を一度も思い出すことはありませんでした。
ずっとマンション暮らしをする予定だったのですが…
おそらく僕に子供がいれば「田舎の一軒家じゃないんだから」と叱る機会もあって「なんか順繰りだな」と懐かしく思い出したりもしたのでしょうが、残念ながら子供を持つことはありませんでした。
だから、泣いたり怒ったり、走ったり跳んだり、無邪気な生活音を発生させる家族を持ったことがなかったのですね。
ご近所迷惑になりそうなことと言えば、せいぜいパートナーとの怒鳴り合いくらいのものでしょうが、手当たりしだいにモノを投げて破壊するような方と暮らしたことはないし、僕もエキサイトして暴れるタイプではないので、さほどお隣さんや階下の方に気を使うようなことはありませんでした…。たぶん。
大人数を家に呼んでパーティをすることも好まないし、しいて言えば、鼻唄が気付かぬうちに熱唱に変わってるくらいでしょうかね。
ただ、ずっと「あまり騒音を出しちゃいけない環境で暮らしてるな」という認識はあって、楽器や音響、DIYなどの音を出す趣味を持つことを無意識のうちに避けてきたように思います。
いま住んでいる東京のマンションを購入するとき「もう一生マンション住まいなんだろうな、わざわざ不便な一戸建てで暮らす必要なんてないもんな」などと思っていました。
30代の終わりくらいの頃ですね。
ところが不思議なものなのですよ。50代半ばを過ぎると「野山を歩き回ったり、新しいことに挑戦できたりするのも、あと20年くらいかな?」などと考えるようになるのです。
そうすると、急に田舎暮らし願望が芽生えてくるのです。
自然に囲まれた一軒家での生活をしてみたくなるのですね。
決め手は「田舎の一軒家」
以前「他人の趣味と向き合う ― 萩市の古民家を買うことにしました」という記事を投稿したように、僕はずっと山口県萩市で空き家を探していました。
東京を離れ、萩市に移住することを決めた理由は前述の「自然に囲まれた一軒家での生活をしたい」だけではなく、いろいろな要因が組み合わさった結果で、そのへんの事情は「生まれた街「萩」の小さなひとつに還ろう」で少し触れていますので、良かったらご参考に。
結局「ここだ」と決めた家が「田舎の一軒家」でした。
正確に言えば、なんとなく「ここ良さそう」と思って訪れた空き家の内見中、何十年ぶりかに「田舎の一軒家」というワードが浮かんできたから「ここだ」と決めたようなものなのです。
もともと「古民家再生をDIYでやりたい」という希望があったので、隣家との境が広い家を求めていたのですが、なかなか条件に合うところがなかったんですよね…。
だから当然、トレードオフはあります。
僕の場合は、
- 下水が完備されている地域
- 萩らしい古い町並みから徒歩圏
- 車がすれ違える前面道路
を、あきらめました。
その代わり、
- 南と西が道路(=角地)
- 北が竹林
- 東が農地
という、隣家と敷地を接していない環境を選びました。
内見中に「これが子供時代に聞いた、田舎の一軒家だ」と思っちゃったんですよね。
ホントの「田舎の一軒家」は、周囲数百メートルに隣家がないような状態を指すんでしょうけど、僕にとってはこれで充分なのですよ。
北の竹林と、東の農地は、なかなかのクセもののようです。
竹林にはイノシシが出るようだし、石垣を積んで土地を上げてあるとはいえ、気をつけていないと敷地内に竹が芽を出すこともあるようです。
東の農地は、夏場はカエルの鳴き声がものすごいようだし、風の強い日は吹きっさらしです。
実際に暮らしてみないとなんとも言えませんけどね。
あれやこれやと悩み続けた家探し。
結局は「田舎の一軒家」というワードに反応して決めてしまいました、というお話です。
生まれた街「萩」の小さなひとつに還ろう。