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「素人のくせにクチ出すんじゃねえ」なワケないじゃん

2018.11.03

こんにちは、萩ドットライフ()です。

クライアントワークをしていると、仕事を評価または承認してくれる人の多くは、デザインの素人さんなのですよ。僕たちはそれを前提として作業をすることになるのですね。「素人のくせに」などという言葉を使う場面など端っから用意されてはいないのです。

過去の自分に対する戒めでもあります

企業の広告部門、宣伝部門の担当者も含めて「素人」で括っちゃうと、いろいろ問題がありそうな気もするのですが、それでも、ジョブローテーションで担当に着かれたばかりで、慣れておられない方がおられたり、クリエイティブではなく管理を主な業務とされている方がおられたり、校閲寄りの方がおられたりしますので、大雑把に「素人」ということにしておきますね。

10数年以上前になりますか。とにかく出し戻しが多くて、いつまで経っても決着してくれない担当者。「ああしたらどう?」「こういうパターンを見てみたい」と延々とバリエーションを作らせようとする方に「僕も、この仕事でメシを食っていますので、おおよそ素人さんが思いつきそうなことは検討した上で、今の案を提示しています」みたいな発言をしたことがあります。
ザックリ言えば「素人のクセに、ウッセエな」ってことですね。

中にはブラッククライアント気味な人もいますから、何が何でも「プロであることを理由に、素人さんにマウンティングしちゃダメ、絶対」ってワケでもないのですが、あまりプロと素人の間に線を引いて考えないほうがいいかもね、って話です。

プロってなんだろうね?

僕が生業としている、デザインの世界だけに限らないと思うのですが、「いったい、プロってなんなんだろう?」と思うのですよ。
僕は、デザインの仕事をもらって納品して、お金をもらってる。そして、それだけで生活できてるので、間違いなく「プロのデザイナー」ですよね。

おそらく「デザインに関する教育を受けた素人」「僕よりもデザインが上手な素人」って山ほどいると思うのですよ。
僕はデザインの練習は継続していますが「教育」は受けていません。オモチャをイジって遊ぶように、デザインに関わることを何年も継続しているだけなのですね。

たぶんプロと素人の線引なんて、ないんじゃないですかね。
議論を押し切りたいときに、メンド臭くなって「オレはプロだぞ」って言いたくなるだけなんじゃないでしょうか。

デザインの話だけで終わるデザインってないんですよ

たとえば「歯ブラシのWebサイトのデザイン」を作ろうという話をする場合、デザインのプロである僕と議論しているのは、歯ブラシのプロだったりするわけです。
向こうからしても「素人のくせにクチ出すんじゃねえ」だったりするのですよ。

双方が「プロである自分に従え」みたいな態度だと、何も前に進まないのですよね。
おそらくデザイナーに求められる職能の中に「デザインに関わることに関しては、素人の意見も聞いて、咀嚼して、議論に付き合わなければならない」というものが含まれていると思うんですよね、そして、その議論の中で何かに気づかなければならないし、それをカタチにするのがデザイナーの業務だったりするのです。

前述の通り「ブラッククライアントは除く」ではありますが…。

むしろ、僕は歯ブラシの素人、向こうはデザインの素人ってことで「自分たちで新しい基準作ろうぜ」くらいの心意気でいいんだと思います。
「あんた、歯ブラシのプロなんだろ? そりゃ心強ぇや」というリスペクトをまずはこっちから、先方に伝えるべきなんでしょうね。

タコツボ化したくないもんね

蛸壺(タコツボ)って言い方がありますね。
本来の「タコを捕獲するための道具」じゃなくて、「一つの物事にこだわって,他に移行できないこと」という意味です。

たこつぼ【蛸壺】
①タコを捕まえるのに使う素焼きの壺。多数を幹縄につけて海中に沈め,タコの入った頃を見はからって引き上げる。
②戦場に掘った一人用の壕(ごう)。
③一つの物事にこだわって,他に移行できないこと。 「 -状態」
出典:たこつぼとは – たこつぼの読み方・日本語表現辞典 Weblio辞書(2018年11月2日現在)

「素人のくせにクチ出すんじゃねえ」みたいなものの言い方って、単に感じ悪いだけじゃなくて、専門性を固定化、硬直化、権力化する態度だと思うのですよ。
これこそタコツボですよね。

まずは「解決策」も「目的」も要らないことにしましょうか」でも触れたように「なんかちょっと引っかかるな」と思ったら、素人だろうが、解決策なんかなかろうが、躊躇せずに口出しをすればいいと思うのです。

プロを名乗っている僕たちも、それを受けて、ちょっと考え直してみたり、別の考え方をはじめてみたり、興味の幅を広げてみることで、視界が広がるのだと思うし、タコツボに綴じ込まれれなくても済むのですよね。
クライアントとそういう関係性を作ることができれば、仕事そのものが楽しくなるし、こちらの信頼度も高まっていくという好循環が生まれすのですよね。

でも、世の中には根っからのブラッククライアントがいますから、そのときは躊躇なく「素人のくせにクチ出すんじゃねえ」って言えるようにはなっておきましょう。
そのためには、日頃から、素人の話に真摯に耳を傾けるクセをつけておく。
そうすれば、「素人のクセに、ウッセエな」というべきシチュエーションもタイミングも判断できるようになると思うのです。

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