素人がプロの仕事を褒めるのは失礼、なのか?
2020.01.05
こんにちは、萩ドットライフ(
)です。「できて当たり前」のプロの仕事に対して、素人が「上手ですね」「美味しいですね」などと褒め言葉を伝えるのって、失礼なことなんでしょうかね? 僕は「プロだ」「素人だ」に関わらず、素晴らしさを感じたら言葉にすべきだと思っているのです。
プロの板前の仕事に「美味しい」なんて失礼?
もう何年も前の出来事なのですが、今もって、そのときのことを思い出してモヤモヤすることがあるのです。
複数人の食事会に出席していたときのことなのですが、板前さんが席に来られたので、そのタイミングで「すごく美味しいですね。これとこれも僕、大好きです」みたいなことを告げたのです。
そのときに同席していたひとりが「プロの人に『美味しい』なんて、失礼なことを言うもんじゃないよ」と割り込んできたのですよ。
板前さんが席を離れてから告げてくれたならば「そうか? 構わないんじゃない?」と反論することもできたのですが、本人が目の前にいる状況だったので、座の雰囲気を壊すこともはばかられ、そのときは否定も肯定もせずに「そんなもんかね」くらいの調子で流したのです。
以来、その席で僕を「失礼だ」とたしなめた人と会う機会もなく、そのことについて誰かと話したこともないのですが、ときどき思い出して「もしかして、オレの口調が評論家ぶった感じだったり、偉そうな風だったのかな?」などとも考えてみるのですが、なかなか自分ではそのように認められないのですよ。
単純に、思ったままの意見を口にしただけなのです。
仕事上でもこういうことってありますよね。
僕の場合ですと、長らくデザイナー稼業に就いていましたので、カメラマンだったりライターだったりと直接会う機会があれば「こないだのアレ、よかったですね」みたいなことを口にすることくらいありますし、言われることもあります。
言って嫌がられることなんて、今まで一度もなかったし、僕自身は言われると素直に嬉しく感じます。
異なるのは仕事上の場面では、僕もプロのひとりとして参加しているということくらいでしょうかね。
とはいえ、褒めるのにプロも素人もないと思うのですよ。
冒頭のように、(僕が素人の立場で)料理人に「美味しいですね」と言ったことなんて何度もありますが、一度も嫌がる素振りをされたことがないのです。
他人からの又聞きでは「『美味しく作ってるのだから、当たり前です』という反応をされた」という話を一度だけ聞いたことはありますけどね…。
プロは「できて当たり前」ではあるのですが…
考えてみればプロなのだから「できて当たり前」だとは思うのですよ。
僕が仕事として成立するデザインをできることは「当たり前」、プロ野球選手が野球が上手いのは「当たり前」なのです。
そうでないと、生活できなくなっちゃいますからね。
そして、プロならばそれを自覚しているはずなのです。
そうだとしても「上手ですね」と言われれば、嫌な気なんてしないどころか「言葉にしてくれてありがとう」と感じる人の方が多いような気がするのですが、いかがでしょう?
まぁ…。「人による」だったり「言い方による」「シチュエーションによる」などなど、細かいことを言えば、なんだかイラっとする場面も皆無ではないんでしょうけどね。
正直、僕も長らく職業人として生きてきましたので、褒め言葉の中に隠された「棘(とげ)」や「嫌味」を感じたことは何度かありますし、後から「含み」に気づいたこともあります。でも、こういうのって印象は強く残っていますが、数としては例外的なのですよ。
正の評価ならば、素人/プロにかかわらず感じたままのことを口にしてもいいと僕は思うのです。
理由は簡単で、職業人としての僕が、そちらの方が嬉しいからです。
疑問を呈したり、批判をするなどの負の評価をする場合には、ちょっと語調を選んだり、状況や背景を理解してから言葉にしたほうがいいとは思いますけどね…。
「オレは客だぞ」と横柄な振る舞いをしたり、延々と他人の仕事にケチを付け続けるような人には辟易としますが、これはまた別問題ですよね。
僕は「言葉にすべき」派です
プロなのだから「上手で当たり前」「美味しくて当たり前」であったとしても、感じたことを言葉にする(=仕事を褒める)のって、割と大切なことだと思うのですよ。
状況は異なりますが、スーパーのレジ係の人に「はい、ありがと」や、飲食店を出るときに「ごちそうさん」と、ひと声かけるのと同様に、ちょっとだけ時間と場を潤す効果があるような気がするのです。
僕は「感じてるのに黙ってる方が、むしろ失礼なんじゃない?」と思っています。
ときどき冒頭で述べた場面のことを思い出しては「なんだか、しっくりこないな」とモヤモヤしていますので、余計にそう思うようになっているのかも知れません。
繰り返しますが「プロはできて当たり前」なのですよ。
当然、褒められなくてもできなくてはなりません。
褒められたか、褒められなかったかが仕上がりに影響してはなりません。
それでも、クライアントや関係者に褒められると、嬉しい反面ほんの少し緊張感が増したり、自分が満足していないものを褒められると戸惑いを感じたり、「うん。間違ってない」と自信が増したり、必ず心が動かされるものなのですよ。
僕の場合は、それが良い効果に繋がることが多ったたように思います。
だから僕は「プロの仕事が素晴らしいと感じたら、言葉にすべき」派なのです。
ただ自分が職業人であるうちは、こういう話ってなかなかしづらいんですよね。
「オレをちゃんと褒めろよ」ってニュアンスを与えかねませんし「オレたち、褒め合おうぜ」ってのも少々不気味ですからね。
現在の僕は、かつて投稿したように「僕はもう、プロじゃない」状態になっているので、自分の考えを語ってみました。
生まれた街「萩」の小さなひとつに還ろう。