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カッコいい職業ですね、ってなんだ?

2020.05.06

こんにちは、萩ドットライフ()です。

昔から、なんとなく「カッコいい職業」って概念はありましたよね。突き詰めていくと、ふんわりとし過ぎていてよく分からないものだったりするんですけどね。でも単なるイメージに過ぎないのかっていうと「そうでもなさそうだぞ」とも思うのです。

カッコいい職業?

「お仕事は何を? へえ、デザイナーですか。カッコいい職業ですね」みたいな会話になったことが何度かあります。

もしかしたら、そういう言葉を投げかけてみることで、僕の反応を伺っていたのかもしれません。

「あんた、もしかして自分でカッコいいと思いながら、仕事しよりゃせんか?」と問いただされているかのような、そんな戸惑いを感じたことも、何度かあります。

僕は現在50代半ば。いわゆる「バブル世代」に入っているのか? ちょい上なのか? くらいの世代です。

確かに、僕が学生のころとか、社会に出たばかりのころとか「カタカナ職業」がカッコいいということになっていた時代はありました。

僕自身も、デザイナーを自分の生業にしようと決するにあたって「あの人みたいになりたいなあ、カッコいいもんな」と思ったことは、確かにあります。

でもそれは、決して「デザイナーになりたい。カッコいいから」って思ったのではなくて、「あの人のような、カッコいいデザイナーになりたい」と思っていたのですね。

「カッコいい」は、個人に掛かるのあって、職業に掛かる言葉ではないのです。
当然、容姿なんかの話じゃなくて、その存在とか姿勢のことですよ。

デザイナーのみならず、コピーライターやフォトグラファー、イラストレーターなど、媒体への露出が多くて、ちょっとしたタレントさんみたいな活動をされている方々もおられます。

街で食事などをしていると「あ、あの人見たことある」って視線を集めるような人ですね。
そういう方々も「カッコいい」の範疇に入られるのだろうと思っています。

自分が就いている職業を「カッコいい」と表現された照れもあって「え? カッコいいわけないじゃん」と思いがちではありますが、辺りを見渡してみると「そっか、中にはカッコいい人もいるのか」と認めざるを得ない状況ではあるのですよね。

そんなことをいい始めると、どんな職業だってそうなんですけどね。

気になって「カッコいい+職業」でググってみると、
自慢できる“かっこいい職業”ランキング|高収入で男女に人気の仕事とは
なんてサイトが見つかりまして、それによると「かっこいい職業の特徴」とは、

  1. 給料が高い
  2. 社会的地位が高い
  3. 制服姿がかっこいい
  4. 専門職など、仕事に就くのが難しい

なのだそうです。
興味のある方は、リンク元をご参照ください。

この特徴と照らし合わせてみると、たとえば僕のような凡庸なデザイナーに当てはまるものだとは思えないんですよね。
給料と社会的地位に関しては「人による」でしょうし、制服着ない、自分で名乗ったらその日からデザイナーですからね。

デザイナーってカッコいい、のか?

照れ半分で自分の生業を腐し続けていても仕方ないので、ちゃんと考えてみることにします。

「デザイナーはカッコいい」ってなんなんでしょうね。

同業者に聞き取りをしたことがあるわけでもないし、今こうしてブログ記事を書きながら「え〜っと」と考え始めていることなので、何の確証もないふんわりとした推察に過ぎないのですが…。

たとえば、Webサイトでも、雑誌でも、プロダクトでも、ロゴマークでも、パッケージでも、個人もしくは小集団による仕事が、世間に露出されていることを「カッコいい」と思うのかな? という気がするのです。

そういうのならば「カッコいい」という言葉を用いるかどうかは別にして、自分も確かに目指していましたし、そのために学習・努力を続けていました。

しかし昔は、納品したらそれは「クライアントのもの」という考え方がありましたし、○○広告賞にでも輝かない限り、デザイナーの個人名が出ることってありませんでした。

せいぜい飲み屋で「こないだまでイジメられてた、○○社の○○キャンペーン。ようやく手が離れたよ」って、仲間内で話題にするくらいでしょうかね。

それが最近は、SNS上で「弊社でお手伝いした○○社のサイトリニューアル、公開しました」とか「このサービスのローンチまで、私がお手伝いさせていただきました」って、「自分が手掛けました」的な言葉がどんどん流れてくるんですよね。

これ、クライアント側にしても「多くの人の目に触れるから、ウレシイ」「そういうの、どんどんやって」ってことに変わってきてるんだろうと思います。

だから、インフルエンサーであり職業人であるという方の価値が、急速に高まってきていますよね。

語弊はありますが、黒子に照明が当たりつつあるんでしょうね。
僕は、とてもいいことだと思います。

ただ反面、そのデザイナーの職業人としての取り組みの断片と、成果物の華やかさだけに目が行ってしまってるという感じも否めません。

長年、この仕事で食ってきた身としては「う〜ん、どんなもんだろうね」と思わなくもありませんが、概ね「これでヨシ」ってところなんでしょうね。

奥深さみたいなものを語り合いたいのって、当事者だけだったりしますからね。

ここまで書いてみて「そっか。デザイナーはカッコいいのか。なら、それでいいじゃないか」と思うようになってきました。

うん「カッコいい職業」ってことで構わない気がする

どんな職業にも言えることなのでしょうが、昔よりも拡散力が必要とされつつあるような気がしますね。

僕はもう、案件の受注をやめて無職になってしまいましたけれども、ずっと1社をメインクライアントとして最重要視&集中してきました。
時間があるときや人間関係上断れないときには、ありがたく他社の案件もお請けしましたけどね…。
(参考:結局「取引先の分散」なんてしなかったな

ずっと、広告・宣伝部門の担当者に知られてるだけではダメで、販売部門や生産部門の方々に「なんとなく」でいいから、名前と姿を知られてることって、重要だと考えていました。

たぶんクライアント内部でも、よきタイミングで僕のことが話題になってたりするんですよ。
「○○案件を担当してくれた、○○さん知ってる?」「あ〜知ってる。ヒゲで坊主のね」みたいな感じで。

そうなると「次の案件も、あの人に頼もっか」ってなりやすいのです。

面と向かって「こんな感じで、僕のこと指名してくれてますよね」と聞いたことはありませんが、たぶんそんなふうだろうと思うのです。

そんな感覚がSNS等を通じて世間に拡がってる感じなのかな? と思っています。

業者選定のときに「SNSでフォロワー多い、この人」ってなると、なんだか共通の知人っぽい錯覚をしたりしますもんね。

SNS上で、自分の仕事を紹介しつつ、取り組み方や考え方を発信してる人が、明らかに増えてきてます。

かつてならば、同業者同士の飲み会や、案件オワリの打ち上げとかで語られてたような会話がSNS上で為されていて「情報量、爆発的に増えてきてるなあ」という気がしています。

いろんな職業の方々が、自分の知らない世界の会話に触れる機会が増えてきてるんですよね。
そういうのもなんとなく「カッコいい職業ですね」って言い方に繋がってるのかもしれません。

だから、昔々の「カタカナ職業、カッコいい」とは少しニュアンスが変わってきているのでしょうね。こうして今日、このネタでブログを書いてみるまで、気にしたことありませんでしたけど…。

僕はたまたまデザイナーだったから「え。デザイナー、カッコいい?」と感じてるだけで、いろんな職業の方々にこういう現象は起こっているのでしょうね。

当然みんな職業人としての意識を持って発信しているのでしょうから、自分を見え方をある程度コントロールしているのでしょうが、ときおり見え隠れする職業に対する重苦しさや、細々とした思考やら、その人の職業感みたいなものに、外部の人はどう反応していいのか分からずに「カッコいい」という感情を抱くのかもしれません。

おそらくこの辺、職業や関わっている世界が違っても、なんとなく通ずるものだと思うのですよ。

かつて僕に向かって「デザイナーですか。カッコいい職業ですね」と言ってくれた方も、同じように「カッコいい」ものを持っておられるのだろうと思います。

それを表す言葉が「カッコいい」で合ってるのか? という気はしますが、今のところこれを使うしかなさそうなのです。

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