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ぼんやりと、空を見つめて暮らしたいのです

2020.07.10

こんにちは、萩ドットライフ()です。

ぼんやり空を見つめていると、どこからともなく「もっと働いて、組織を大きくして、さらに大きな資産を形成すべきだ」という声が聞こえてきます。そうするとどうなる? ぼんやり空を見つめて暮らすことができるよ。これ、有名な笑い話のパクリです。

漁師とコンサルタント

いっときよく目にした「漁師とコンサルタント」という笑い話があります。
いつ頃から語り継がれている話なのか? 初出はどこの誰なのかは謎なのですが、なかなか考えさせられる話なので、少々長文ですが引用してみますね。

メキシコの海岸沿いの小さな村を、アメリカ人エリートコンサルタントが訪れました。
波止場に止めてある漁師の船を見ると、黄色い背びれを持つ活きのいいマグロが獲れています。
そのアメリカ人コンサルタントはその船の漁師に尋ねます。

「その魚を釣り上げるのにどれくらいかかったのですか?」

メキシコ人漁師は答えます。

「数時間くらいかな。」

「なんでもっと長く海に残って、もっと魚を獲らないんですか?」

「家族が必要としている分があればそれでいいのさ。」

「では、仕事以外のときは何をして過ごしているんですか?」

「遅くまで寝て、魚を少しばかり獲って、子どもと遊び、妻のマリアと一緒にゆっくり昼寝をして、夕方頃には村に散歩に出て仲間たちとワイン片手にギターを弾いて楽しむね。本当に充実した毎日だよ。」

それを聞いて、コンサルタントは鼻で笑いながら言いました。

「私はハーバード大学を卒業してMBA(経営学修士)を取得したコンサルタントです。そこであなたに助言をしましょう。
まず、あなたはもっと漁をする時間を長く取るべきです。そして、大きな漁船を買ってください。そうすれば、もっと魚を取ることが出来て、さらに多くの船を買うことができますよ。最終的には大きな漁船団を手に入れることが出来るでしょう。」

「また、仲介業者を挟まずに獲れた魚は加工業者に直接出荷しましょう。最終的には自分の加工工場を作ることが出来るでしょう。製品、加工、流通に関してすべて自分でコントロールできるようになりますよ。」

「そしたら、こんな小さな漁村を離れてメキシコ・シティに移り、その後ロサンゼルスに、最終的にニューヨーク・シティへ進出するんです。あなたの大きくなった会社を経営できるようにね。」

それを聞いた漁師は、コンサルタントに聞きます。

「で、それはどれくらいかかるんだい?」

「15~20年くらいですかね。」

「じゃあ、その後は?」

コンサルタントは興奮気味に答えます。

「ここからが最高ですよ。あなたの会社を株式公開して、自社株を大々的に売り出すんです!あなたは巨万の富を手に入れ、一躍億万長者に成り上がるのです!」

「巨万の富か…それで、次は?」

コンサルタントは満面の笑みで答えます。

「そしたら、大金を持って早期リタイヤですよ!あなたの好きなことがなんでも出来るんです!遅くまで寝て、魚を少しばかり獲って、子どもと遊び、妻のマリアさんと一緒にゆっくり昼寝をして、夕方頃には村に散歩に出て仲間たちとワイン片手にギターを弾いて楽しんだりできるでしょうね!」

出典:「メキシコ人の漁師とハーバード大卒のコンサルタント」の話 | 笑うメディア クレイジー(2020年7月10日現在)

僕が以前目にしたものは、最後に漁師の「そんな生活なら、もう手に入れている」というセリフで締められていたはずなのですが…、いろんなバージョンがあるんでしょうね。

こんな大袈裟なはなしじゃなくても、フリーランスでそこそこの現場に顔を出してたり、ひとり親方と言えども法人化していると少なからず「人を雇って組織作らないの?」とか、「下を育てないと、将来キツいよ」みたいな話をされたりします。

結局は、ずっとひとり親方を通してきました。その辺の話は、以前「人を雇わない会社を経営してきた理由」という記事を投稿していますので、ご参考に。

二元論で語れる話じゃないんですけどね

この話がネット上で話題になっていた頃には、漁師派とコンサル派に分かれて、そこそこの議論を巻き起こしていたように記憶しています。

概ね漁師派は、

  • 漁師は自給自足の生活のなかで十分な豊かさを得ている
  • 幸福はお金には換算できない
  • 収入に気を取られると、目の前の幸せに気付けなくなる

コンサル派は、

  • 漁師は、漁ができなくなったときに備えることができていない
  • 同じ生活でも、金融資産を持ってるか持ってないかで大きく異る
  • 挑戦する気持ちこそが、人生を豊かにしてくれる

みたいな感じだったように記憶しています。

一概に「漁師派」か「コンサル派」か、と問われても、双方極端すぎてポジション取りに困っちゃいますよね。

この話を聞いた当時、僕はずっと東京に住みながら、死ぬ直前まで、もしくは需要がなくなるまでデザイナー稼業を続けようと思っていた時期だったように思います。

「スタイルとしては漁師寄りだけども、コンサルが勧めるような資産化も重要だよね」くらいの受け止め方だったと記憶しています。

大きな漁船を買う(=人を雇って組織を作る)ようなこと関しては、運用がメンド臭いし、リーダーの素養なんてゼロなことが分かっていたので、まったく希望を持っていませんでしたが、「もっと漁をする時間を長く取るべきです」に関しては、その言葉通り、請けられるだけの案件を受注し、寝る間を惜しんで働いていました。
(参考:「セルフブラック」の功罪

でも、なんとなく憧れを抱いたのは「漁師」だったような気もしますね。

とはいえ、お金なんて、ないよりあった方がいいに決まってるし、自分のビジネスを大きくした上で株式を売却して大金を手にする体験も、とても楽しそうだとも思いましたけれどね…。

とりあえず今は、ぼんやりと過ごしたいのです

この笑い話は、ストーリーから得られる印象のみをもって、一面的な解釈で自分を「漁師派」か? 「コンサル派」か? と二元化し、薄っぺらい議論を始める人々を「笑う」お話なのだろうと思うのです。

「自分は○○派だから、こう生きなければならない」と、自己絶対化に陥るような人が笑いの対象なのです。

たぶん、10人の人がいれば10通りの解釈があるだろうし、時間の経過とともに考え方は変わってくるものなのです。

前項で述べたように「請けられるだけの案件を受注し、寝る間を惜しんで働いた」僕は、大金持ちとは言えずとも、人様よりもほんの少しだけダラケて過ごせるだけの資産を形成し、いま無職になっています。

この感じって、漁師の側に寄っていったのか? コンサルの側に寄っていったのか? よくわかりませんよね。

でも、本当に自分が生きたいスタイルはどんなものなのか? 美しいと感じるものはなんなのか? 本当の正しさとは…? みたいなことを自分で考えて、決めて、行動できるようにはなりました。

漁師とコンサルの考え方が違うように、でも(物語の中では)同じ着地点を目指しているように、人の歩く道って千差万別なんですよね。

当然「遅くまで寝て、魚を少しばかり獲って、子どもと遊び、妻のマリアと一緒にゆっくり昼寝をして、夕方頃には村に散歩に出て仲間たちとワイン片手にギターを弾いて楽しんだりする」ような生活になんて興味がなくて、とことん組織を大きくし、死ぬまで収益にこだわり続ける人がいても構わないのです。

どういう道を通って、どういうところに着地したいのか? みたいな話に「正解」はありません。
みんながそれぞれ、思い思いの生き方をすればいいのです。

とりあえず、いまの僕は、先日投稿した「気の向くままに、暮らせる時代だから」でも書いたように、「ダラダラしたいときにダラダラすることを選択する」とか「気が向いたときに風通しの良い場所へ、見晴らしのいいところへ移動したい」みたいな暮らし方をしてみたいのです。

もしかすると、数年経ったら狂ったようにガシガシ働き出すかもしれませんけどね。

とりあえず今は、ぼんやりと、空を見つめて過ごしたいのです。

生まれた街「萩」の小さなひとつに還ろう。